清水のブログ

「いち」大学生の日々

『きりこについて』西加奈子

どうして「分かる」のかが、分からないだけ。

 

こんにちは。西加奈子さんの『きりこについて』という小説について です。

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ネコさんです。

 あらすじ(裏表紙の紹介文)

小学校の体育館裏で、きりこが見つけた黒猫ラムセス2世はとても賢くて、大きくなるにつれ人の言葉を覚えていった。両親の愛情を浴びて育ったきりこだったけれど、5年生の解き、好きな男の子に「ぶす」と言われ、強いショックを受ける。悩んで引きこもる日々。やがて、きりこはラムセス2世に励まされ、外に出る決心をする。きりこが見つけた世の中でいちばん大切なこととは?

とのこと。

西加奈子さんの他の小説『サラバ!』『i』と同様に、一人の人間が子供から成長していく様が描かれています。

ラムセス2世について

上記で太字にしたラムセス2世についてです。

上にありますが、彼はネコです。しかもすごくすごく賢いネコ。

この小説は『きりこについて』 というタイトルですが、『ネコについて』と言っていいほどネコ愛に溢れた作品です。

ネコから見た世界の様子や、ネコたちの哲学が作品の至る所で登場します。それはなかなか独特だけど納得できることもあって面白いです。

(ちなみにラムセス2世の由来はエジプトのファラオの名前からです。気になる人は調べてみてね。)

ぶす について

もう一つ太字で書いた言葉「ぶす」についてです。

なんともひどい言葉ですが、裏表紙に書かれるだけあり、作品のキーワードの1つになっています。

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文中でも太字で書かれちゃってます。

のっけから、きりこがいかに「ぶす」であるかを語られます。

そして裏表紙にあるように、きりこが好きな男の子に「ぶす」と言われしまってから物語は急転します。

周辺人物について

主役は「きりこ」と「ラムセス2世」ですが、2人(1人と1匹)の周りに登場する人々も、ほぼ全員が物語の最後まで関わってきます。

きりこの両親や友達、きりこの住むマンションの住人、ラムセス2世とネコたち・・・など。

いわゆる「モブ」がおらず、それぞれの人物の人生が細かく描かれています。序盤に出てきた人物が再び出てきたり。これはなかなか読み応えがあります。

伝えたいこと

これを書くのはどうかな。と思ったものの、ブログを書くってことはみんなに伝えるってことなので書きます。

「伝えたいこと」とありますが、あくまで僕が読んで感じたことですので、作者の主張とは違うかもしれません。

ずばり「自分を大切にすること」です。自分をないがしろにしないってことです。「世の中がそうしてるから」って理由で行動しない。ってことでもあります。

自分よりも自分のことを理解してくれる人(あるいはネコ)はいるかもしれません。そういう人を大切にするのも良いです。

でもここでは別のお話で、たとえば、人と比べて「自分の苦しみなんてしょうもない」とか考えないこと、自分が嫌な目に遭ったら(遭う前に)助けを求めよう。ってこと、自分が「こうなりたい」と思うならばそうなろうとしよう。ってことです。

自分のなりたい姿と周りからのイメージが異なってる人には読んで欲しいと思います。

※ネタバレ(後半の展開)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いいですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上述したように、きりこが好きな男の子から「ぶす」と言われてから、物語は急転します。急にシリアスに、スピリチュアルになり、作者の主張(たぶん)もたくさん出てくるようになります。ここからが本番なのでしょう。

きりこは次から次へ予知夢を見るようになります。(どうやらネコと同じ能力だそう。)誰かが泣いていたりする、悲しい夢。

それを見てきりことラムセス2世は、夢の中で泣いている人を救うべく奔走するようになります。

ここで登場するのが序盤に登場した「周辺人物」です。

最初の一人が「出井ちせ」という人物。(以下「ちせちゃん」)

彼女は、レイプ被害に遭い、周囲にその理不尽さを訴えても分かってくれない。あげく「自業自得」と言われたりして苦しんでいました。

ちせちゃんは、14歳の頃から性交を行い、出会い系サイトを利用して行ったりしていました。

その印象があるために、被害者である彼女を「自業自得」などと周囲は言いました。(彼女はルールを決めて「安全に」行っていたのに。)

きりこにはなぜかその痛みが伝わり、夢を見たわけです。記事の冒頭の どうして「分かる」のかが、分からないだけ。というのはここで出てきます。

ここから、きりことちせちゃん(とラムセス2世)は「自分を大切に」するべく、分かってくれない世の中と戦うのです。

ここがこの作品の一番の見所だと思います。世の中の常識という名の偏見や理不尽に負けずに、自分を大切にすることの大事さを、ネコの哲学と共に教えてくれます。(読み返してみると、きりこの子供の頃の描写にも世の中のくだらない慣習が出てくるのが分かります)

最終的にきりこは救ってきた人たちを起業することになります。その会社の様子がイキイキとしているので、起業もいいな。とほんの少し思いました。本読んで、これの積み重ねで行動に移ることもあるかもしれません。バカらしいかもしれませんが、ただ過ごしててもきっかけなんて無い日々で本の影響は大きいのです。(何の話だっけ。)

 小説の最後に、この本はラムセス2世が書いたものということが明かされます。まあネコをやたらに細かく描いていたり、途中で分かる人もいそうですが。分かった上で読み返して二度美味しい作りとなっております。

おわりに

この小説をまとめると、

「自分を大切に」

「ネコは尊い」

これに尽きます。悩んでる人、悩んでない人、ネコ好きの人はぜひ。

きっと自分を大切に、ネコのように「歩くために歩い」て生きていきたい。そんなことを思う小説でした。