清水のブログ

「いち」大学生の日々

『生命式』村田沙耶香

以前、村田沙耶香さんの『コンビニ人間』を読みました。

今回は同じ作者の短編集『生命式』を紹介します。

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あらすじ&ひとこと感想

全12篇の短編集になっていて、書籍名の『生命式』もその1つです。

それぞれのあらすじ&ひとこと感想をざっと書きます。

生命式

人が死んだとき「葬式」ではなく「生命式」が主流となった世界の物語。死者の死体を調理して食べ、生命式の参列者は「受精」(この世界ではセックスとは呼ばない)をし新しい命を生む。主人公が子供の頃は葬式が主流で、価値観の変化に戸惑う姿が描かれている。

書籍名に掲げられているだけあって衝撃的です。作者は「生理的にムリ」っていうのをひっくり返そうという思惑があるのかと考えさせられました。

素敵な素材

家具や衣類などに人間由来の素材が使われる世界の物語。たとえば「人毛のセーター」は最高級品とされたり。主人公の婚約者は人間由来の素材を嫌うが、妻(主人公)や家族を見ていて何が正しいのかわからなくなる。

『生命式』同様「生理的にムリ」を覆そうとしている(と思う)作品です。

表紙の「髪の毛のシャンデリア」はこの作品由来と思います。

素晴らしい食卓

主人公とその妹、その夫、夫の家族それぞれの偏食家の食べ物が同じテーブルに並んでカオス。

説明が雑ですみません。でもこう書くほかないのです。「カオス」を見てどう思うかは読んで確かめてください。

夏の夜の口づけ

 年を重ねた女性2人の会話。(この本の中で最も短いです。)

雰囲気が素敵です。

 二人家族

 

『夏の夜の口づけ』の続編。同棲した2人のお話。「普通の結婚」とかあれこれ。

「世間はやかましいよねぇ」っていう。僕もす思います。

大きな星の時間

夜になっても眠くならず、人々が「眠る」行為をしない国でのお話。

おとぎ話のようで素敵な空気の物語です。

ポチ

 

女子小学生が中年男性を「ポチ」と名付けて裏山で飼育している話。

これは・・・作者が楽しんでるなってのが伝わりました。

魔法のからだ

女子中学生のお話。性を「下ネタ」とかって消費するのってどうなのとかあれこれ。

確かに「元カノが~」とか「依存が~」とか軽々しく言ってるのを見るとどうなのって思います。たぶんそういうことと僕は受け取りました。

作者は思春期を描くことに定評があるらしいです。

 かぜのこいびと

 

女の子の部屋のカーテン「風太」目線で描かれるお話。女の子と男の子とカーテンの三角関係なのかな。

パズル

 

 

 人間(有機物?)が好きな主人公のお話。その「好き」は主人公の口から語られると異常に思えるけど周りの「普通の人」から見ると違和感を感じないどころか素敵な人に見られているというのが面白いです。

作者曰く「宇宙人目線で小説を書きたかった」とのこと。『コンビニ人間』に似てる感じします。

街を食べる

田舎で山菜を取ったり小鳥を狩猟して食べたりしてきた主人公はスーパーの野菜が食べられず都会で食べられる植物を探す。本人は周りに変に思われないようにごまかしている(つもり)。

公園で鳥のお墓を作っている男の子に「食べてあげたほうが供養になるんじゃない?」と言って泣かせてしまうシーンが印象的です。正しい価値観なんてないんだなぁと改めて思います。これも『コンビニ人間』に似てます。

孵化

主人公は「性格がない」らしく、成長するにつれて所属するコミュニティ毎に別のペルソナをかぶってきたが、結婚式をすることになりいろんなコミュニティから友達が来てさあ困ったぞ。

誰しもコミュニティ毎に無意識的にか意識的にか自分の印象を変えることはありますが、主人公はすごく極端です。「本当の自分ってなんだろ」とか考えて読み進めていくと登場人物が好き勝手に動き始めます。

「登場人物が動いて物語ができる」って創作者はよくいいますが、まさにそれを体感しました。

まとめ

ひとこと感想にも書きましたが、「普通」って価値観を覆す小説でした。狙ってかどうかはわかりませんが。

描写的に苦手な人は嫌悪感を感じると思いますが、オススメしたい本です。(気分を悪くしても責任は取りません)

 

生命式

生命式

  • 作者:村田沙耶香
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2019/10/16
  • メディア: 単行本