清水のブログ

「いち」大学生の日々

『死にがいを求めて生きているの』-7 安藤与志樹(後編)-

 第7編です。

今回が、今のところで一番ボリュームがありました。

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あらすじ

与志樹の過去が語られます。

彼には、中学校のビブリオバトル(本のプレゼン大会)で、教師に認められ、全校生徒からの視線を浴びた黄金時代がありました。

しかし高校生になると、それは終わりました。

マシンガンのような早口で本の紹介をするのも「妖怪唾吐き」と呼ばれ、中学で地味だと思っていた子に、

「お前変わらないな。中学の時選んだ本も教師の好みで選んだだけで、本好きじゃなかっただろ?相変わらず、目的と手段が逆転してる。」と言われてしまいます。

 

ある日、RAVERSのメンバーの青山が「RAVERSをやめたい」と言いました。

「本当は初めからレイブなんてやりたくなかった。ただ好きな音楽の話ができれば良かった。」と話します。

与志樹はその言葉を聞き、「相変わらず、手段と目的が逆転してる。」の言葉を思い出します。

いつからか、レイブによって注目を集めることが目的になっている。

 

以前、テレビに出演したメンバーで飲み会をすることになりました。

メンバーの一人の李民俊が兵役のため韓国へ帰るということで、サプライズパーティが行われます。

「李君、兵役、ファイト!」と書かれたケーキを前に、李は話します。

「こうやって喋って満足するだけのおままごとはもう、終わり。」「正真正銘、実際に、身を捧げてきます。」

その言葉に、メンバーの一人である「めぐみ」から反発します。「私たちのやってることが結局おままごとって言ってるわけ?」

李は返します。「おままごとの人も、いるでしょ。」そして与志樹に言います。

「日韓問題について改めて聞きたいとか言って、ほんとは興味ないですよね。」

与志樹は、高校生の頃に言われた「お前、本好きじゃなかっただろ」の言葉を思い出します。

 

2日後、与志樹は、「ラーメン大将」でバイト中の雄介に会いました。

雄介は「ジンパ復活」を掲げて署名活動をしていたのですが、別の活動によりジンパ復活が成し遂げられ、ジンパ復活のチラシを剥がしている最中でした。

そして今度は「自衛隊に入る」と言います。

 

与志樹は、テレビ番組で知り合った「めぐみ」と恋人になり、めぐみの、ホームレスを援助する団体の手伝い(実際はほぼメンバー)をしていました。

めぐみの家が事務所になっていて、ボランティアの人2人とともにめぐみを待っています。

しかし、一向に来る気配がないので、与志樹が活動場所である狸小路に行くと、ベンチでめぐみが横たわっていました。疲れて眠ってしまったようです。

めぐみを起こし話を聞くと、「私はもっと人を救わなきゃだめなの。おままごとじゃないの。」と与志樹に話します。

 

与志樹は一人で智也のバイトする店に行きました。

智也に「雄介が自衛隊に入ろうとしてる」と話します。

智也は「知ってる。高校生の頃もそんなことがあった。」と言います。

「成績ががくっと落ちたとき、そうやって言ってた。変化球で注目浴びられて満足そうだった。でも、テストの上位者が表彰されるようになったら成績が上がって、自衛隊なんて言わなくなった。だから今回も行かないよ。」と続けます。

与志樹は智也に「なんで雄介と仲いいの?」と聞きます。

「そんなの、特に理由はないよ」と答えます。

「智也君の生きがいって、何なの。」と聞きます。

「それって、なきゃいけないの?」と答えます。

 

めぐみが病院に搬送された、と与志樹に連絡がありました。

病室へ駆けつけると、骨折だけで重症ではない様子でした。

寝ているめぐみに与志樹は話します。

「団体、ちゃんと手伝うよ。でもそれは社会問題に立ち向かうとか、自分を誰かに見せたいわけじゃなく、めぐみの目のクマが消えてほしいから。」

めぐみは答えずに、自分高校生の頃の話をします。

「当時付き合っていた男の子と『そういう雰囲気』になったとき、『体が変』と言われた。それを学校で言いふらされた。変な体の私は子供を作れなくて、幸せになれないと思った。生きてるだけで罪悪感が積み重なった。」

「罪悪感から逃れる方法を考えたとき、新しい命を作れないなら、死んでいく命を救おうと思った。はじめから、ホームレスの人じゃなくて、私を救うためだった。」

「テレビ番組で与志樹に会ったとき、『この人とならできるかも』と思った。」

「朝起きて与志樹の寝顔を見たら、誰かを救うなんてどうでもよくなった。」

めぐみは与志樹に「嘘ついてたのに怒らないの?」と聞きます。

与志樹は「怒らないよ。俺もそうだったから。」と答えます。

めぐみは「今なら、生きる意味とか、生きがいとか、そういうのなくても、生きていけるかも」と言います。

 

与志樹、めぐみ、青山、ミホ(青山の彼女)の4人で、北大の学祭に参加しました。

学祭では、「一万人の都ぞ弥生」と呼ばれる行事があります。

恵迪寮の寮歌『都ぞ弥生』を学祭参加者が肩を組んで歌い、騒ぎ、学祭を締めます。

その会場へ移動していると、テレビのインタビューを受けます。

恵迪寮の自治問題についてのドキュメンタリーを制作しているようです。

インタビューの受け答えもそこそこに会場へ移動します。

会場に着くと、雄介の姿が見えました。

彼は、大勢の人の視線を浴び、「恵迪寮に自治を」という旗を大きく掲げていました。

どこからか智也の声が聞こえました。

「雄介は見つけたんだ。次の生きがいを」

感想

長い!

あらすじだけで2000文字突破していました。

コンパクトにまとめられるといいんですけどね。

「」の台詞でストーリーを表すのもあまりよくない気がします。うーん・・・。

さて、感想です。

与志樹の内面が掘り下げられました。

与志樹は、雄介と似たところがありますが、彼は「めぐみのために生きる」という生きがいを見つけたようです。

対照的に雄介は、自衛隊だったり恵迪寮の自治だったり、まだ右往左往しているようです。

「手段と目的の逆転」は雄介にも見られるように思えます。

「自分は特別な存在だったり、大きなことを成し遂げられないが、誰かの特別になれた」というお話はけっこうあるように思えます。

 以前感想を書いたものだと、↓の2つとか。

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 与志樹との会話の中で智也が、「生きがいって、なきゃいけないの」と言います。

小説のタイトル「死にがいを求めて生きているの」に繋がる台詞に感じます。

多分彼は、「注目を浴びる」「人にこう思われる」ことに固執する雄介とずっと一緒にいて、「生きがい」が人を苦しめているように思えたのではないでしょうか。

雄介ほど固執するのは珍しいけど、そして「人の評価なんて気にしない」と思いたい人は多いけれど、結局気にしてしまうのが現実だと思います。(少なくとも僕はそうです。)

余談&おわりに

北大の学祭の「一万人の都ぞ弥生」や、「ラーメン大将」は実際に存在します。

この小説を読んだのをきっかけに「ラーメン大将」にはこの前行ってきました。

小説は絵がない分想像力が働きますが、今回のように実在して、かつ知っている場所が舞台のパターンも面白いですね。

さて、残りは3編となりました。

実は、この感想を書いている時点では第10編の途中まで読んでしまっています。

ですが、できるだけ初見の感情を大切に感想を書いていきます。

こうして読み進めながら書いていくと「手のひら返し」ができないのはいいですね。

あとで「実はこうだったんだ」と分かったときに「最初からわかってたし~」ってなりません。

では、残り3編をお楽しみに~