清水のブログ

「いち」大学生の日々

『桐島、部活やめるってよ』朝井リョウ

前置き

朝井リョウさんの『桐島、部活やめるってよ』を読みました。

著者のデビュー作で、たぶん最も有名なのではないでしょうか。

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巻末の解説に「『お若くない方にはご遠慮いただきます』と言われているような装丁。」とありました。たしかに。

僕は、朝井リョウさんの作品は『死にがいを求めて生きているの』のみ読んだことがあります。

(感想を書いたものの、7章/10章で失踪してしまった記事↓)
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 『死にがい』は、同じ舞台の上で、様々な人物の目線で短編が集まっている、いわゆる「グランドホテル方式(群像劇)」でしたが、今回読んだ『桐島、部活やめるってよ』もまたその方式でした。人名が章のタイトルとなり、7編の短編が収録されています。

というか、作品が書かれた順だと『桐島』の方が先なので、多くの人は『死にがい』を読んで「おっ、『桐島』と同じやん」と感じるのかもしれません。

 

 

あらすじ&感想

「あらすじ」といっても、先述したような特徴をもつ小説なので、物語は明確なゴールに向けて展開するわけではありません。

「桐島が部活をやめた」事実を囲んで様々な人物が描写されます。(意外と直接の関係がある人物は少なく、「バタフライ効果」くらいの感じですが)

そして「桐島」は話に上がるだけで、最後まで姿は見せません。

メインキャラクターではなく、話のきっかけに過ぎない人物をタイトルにするのは面白いですね。

 

舞台は高校。桐島はバレー部のキャプテンです。

彼が突如部活をやめ、その周辺人物に様々な変化が起こっていきます。(直接関係なさそうなのもあり)

例のごとく、印象的な部分を抜き出しつつ、感想を書きます。

(↓「例のごとく」の「例」)

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前田涼也

前田涼也は、高校の映画部に所属しています。

彼は、いわゆるクラスカースト、でいう「下」にあたる、と感じています。

教室では同じ部活の武文と隅の方で話し、体育のサッカーは嫌い。

そんな彼ですが、映画部の活動をするときはとても輝きます。

映画の話をするときはまるで評論家のように雄弁で、カメラのレンズから覗いた世界は彩りにあふれている。

 

小説の構造上、彼自身がそれを語るのですが、読んでいてにやにやするくらい生き生きとしています。

高校の頃、放送部で映画を撮ったりしていた友達(リア友)を重ねて読んでいました。ああ、いいなぁって感じで。

菊池宏樹

菊池宏樹は、野球部だけど部活には参加せず、かわいい彼女といちゃいちゃして下校。クラスカーストでいえば「上」の人間。

だけど、そんな日々に対して、ぼんやりとした無気力さを感じています。

 

彼女はかわいいけど、ただそれだけ。

彼女はずっと同じ価値観で生きていくのだろう、と強烈にかわいそうに思うことがある。

映画部のやつは体育のサッカーでミスしても、まるで何もないように扱われる。

だけど彼には好きなものがある。自分とどっちが虚しいのだろう。

 

ある日、体育館の方へ行くと、映画部の二人(前田と武文)を見かけます。

彼らは、撮影のため体育館へ向かっていましたが、カメラのレンズにかぶせる蓋を落としたことに菊池は気づきます。

拾って渡そうと、体育館で撮影していた前田のもとへ行くと、彼は生き生きとした表情でレンズを覗いていました。

それを見て菊池は衝撃を受けます。その様子は、

ひかりだった。ひかりそのもののようだった。

と表現されています。

無気力だった彼には、前田の姿が自分に射し込む光に見えました。

 

この場面が小説内で一番好きです。

この小説は群像劇ではあるものの、登場人物同士が直接会話することはあまりありません。

その中で、前田と菊池の邂逅は非常に美しく描かれていて、とても素敵でした。

まとめ

かなりざっくりと書きましたが、実際に読んでいくと、同じ舞台の上で人物同士がさりげなく関わる描写が多数あり、人と人との繋がりを意識させられます。

 

高校が舞台なので、やはり自分自身の高校生の頃と比べたりしながら読み進めました。

小説には絵がないので、風景は勝手に自分の通っていた高校で想像されました。

これはどんな小説にもいえると思いますが、読む人それぞれで思い浮かべるもの、感じるものが違うって本当に面白いですね。

 

なぜか最近、自分の過去を振り返って嫌になることが多く、小説とか読むと想像力が高まって尚更そう思います。

今と当時を比べて今が優れてるってことないんですけどね。とにかく恥ずかしくなっちゃいます。

小説を読むと嫌でも思い出が蘇ります。

うーん、恥ずかしいけど、案外そういうのって大切なのかなーーー

 

 今回は書きませんでしたが、女子の目線で描かれた章もあり、女の子間のドロドロ感が描かれます。(朝井リョウが男性だから疑わしく思っちゃうけど、まあ小説だから・・・)

(↓ドロドロ感ありの小説。この本の感想書きたいのに書いてない)

 

『桐島、部活やめるってよ』は著者が19歳の頃に書かれたそうです。

高校卒業して、早稲田大学に在学中の頃でしょうか。

高校生に近い年齢だったからこそ書けたのかもしれません。

『死にがい』の時も感じましたが、人物になりきって描くのがすごいですね。(僕も小説を書いてみたいのですが、なりきるのはどうしても恥ずかしくなっちゃいます。)

自分は一人しかいないわけで、他人の考えることは分かりません。この小説では登場人物それぞれに葛藤があり、自分の周りの子もこんなこと考えてたのかなんて思わされました。

中高生が読みがちな本だとは思いますが、大人が読んでもまた違った目線で楽しめrので、読んでいない人は是非。読んだことある人も改めてどうでしょう。