清水のブログ

「いち」大学生の日々

『卵をめぐる祖父の戦争』ディヴィッド・ベニオフ/田口俊樹 訳

 この記事でちらっと話に出た小説です。

読み終えて、とっても面白かったので紹介するべく記事にしました。

www.shimizu-blog.com

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アメリカの作家・脚本家「デイヴィッド・ベニオフ」さんが書いた小説で、「全米30万部を超えるベストセラーを記録」したそうです。

原題は"City of Thieves"です。直訳で「泥棒たちの街」でしょうか。

裏表紙のコピペ(打ち込みだけど)ですが、あらすじを下に書きます。

あらすじ

「ナイフの使い手だった私の祖父は十八歳になるまえにドイツ人をふたり殺している。」

作家のデイヴィッドは、祖父のレフが戦時下に体験した冒険を取材していた。

ときは一九四二年、十七歳の祖父はドイツ包囲下のレニングラードに暮らしていた。

軍の大佐の娘の結婚式のために卵の調達を命令された彼は、饒舌な青年兵コーリャを相棒に探索に従事することに。

だが、こんな飢餓の最中、一体どこに卵なんて?

ーー戦争の愚かさと、逆境にあらがってたくましく生きる若者たちの友情と冒険を描く、歴史エンタテインメントの傑作。

時代背景や感想など

「作家のデイヴィッドが祖父に取材し、祖父が思い出を語る」というプロローグで始まります。ちなみに、作者本人の名前がデイヴィッドですが、この話は実際に祖父に聞いたわけではなく、フィクションだそうです。

舞台は1942年のレニングラード(サンクトペテルブルク)。

第二次世界大戦で、ドイツ軍がソ連に攻め込んできて、「レニングラード包囲戦」と呼ばれる攻防が行われていたときです。

この包囲線はほぼ900日に及び、「近代戦史上最長の包囲線」だそうです。(訳者あとがきより)

レニングラードに住む人々は飢餓や爆撃に怯えながら暮らしていて、まさに地獄の様相です。

作中には「タマネギ半分を四等分、百二十五グラムのパン一個も四等分ーーこれでもずいぶんまともな食事だった」とあります。

 

レフとコーニャが卵を探して各地をめぐる中でも様々な惨状が見られます。

死体が街のいたるところに落ちていたり、本の背を剥がし、表紙と紙をくっつける糊をタンパク質として食べたり、人食いの人間がいたり、、、、、

戦争はすべてを破壊するのだと感じさせられます。人命尊重ももちろんですが、経済的にも文化的にもデメリットばかりです。なのに起こっていたし、今も起こっているのですね・・・。

 

そんな状況ですが、レフと一緒に卵を探すコーニャは疲れ知らずで、いつもつまらない小話をしたり、軍の人間を相手にしても臆さず話したりします。

対してレフは臆病で行動力もありません。それでもコーニャや他の仲間と一緒に目的のために進み続けます。

この2人(と仲間)のやりとりは、健康な若者そのもので、見ていて楽しいですし、勇気をもらえます。

 

レフは、作中の言葉だと「自分の脳みそのおしゃべりから逃れられない」そうで、例えば銃撃戦の最中でも「こんな格好で恥ずかしい」とか考えてしまっています。

なんとなく、自分もそうなってしまう気がします。

「訳者あとがき」では、「このような空想こそ怨嗟の連鎖を断つのではないか、レフという主人公の存在自体が、著者の巧みでさりげない反戦メッセージになっている。」と書かれていて、なるほどでした。

戦争という異常事態の中でも一人一人の日常があることに改めて気づかされました。(『この世界の片隅に』は「戦時中の日常」がテーマでしたね。好きな作品です。)

 

命のやりとりをする場面もあり、語り手が「祖父=レフ」なので彼が命を落とすことはないと分かっていますが、それでもはらはらします。

小説を読んでこんなに気持ちを揺さぶられるとは思いませんでした。読みながら「生きてくれ!!」と願ってました。

 

あらすじに「エンタテインメントの傑作」とありますが、ただ楽しかった、で終わらず、戦争の惨状や人間の生き様を知ることができる素敵な作品でした。

興味を持った方はぜひ読んでみてください。